IT導入(システムやツールの導入)を検討するとき、多くの会社が同じように考えます。
- ITは専門外
- 社内に詳しい人がいない
- だからベンダーに任せる
「詳しくないから任せる」という判断は、間違いではありません。
問題は、どこまで任せてしまっているかです。
というのも、これまでの経験から申し上げますと、IT導入が行き詰まる会社の多くは、「任せてはいけない部分」まで外に出してしまっています。
ITベンダーは「判断の責任」を持てません
最初にIT導入を考えている会社側が、正しく理解しておくべきことがあります。ITベンダーは、
- 技術の専門家である
- システム構築のプロである
ということです。しかし、あなたの会社の経営や業務の責任者ではありません。
もし、IT導入を行った結果
- 業務が回らなくなった
- 現場が疲弊した(混乱した)
- 投資が回収できなかった
この結果になった場合、責任を負うのは常に会社側です。
それなのに、
- 何を優先するか
- どこを変えるか
- 投資に見合うか
といった判断までベンダーへ委ねると、責任と判断が分離します。結果、上手くいかなかったとき、後から必ず問題になります。
ITベンダー任せが危険な理由
理由①|ベンダーの「最適解」は、会社の最適解ではない
ベンダーは、自社の製品・サービスの中で最も効果的な提案をします。
しかしその提案が、
- 今の業務に本当に必要か
- 優先順位として正しいか
- 投資に見合うか
導入を検討している会社の視点と必ずしも一致していません。
なぜなら、ベンダーにとっての最適解は、「作りやすく、説明しやすく、営業成績を満たしやすい構成」であることも多いのです。
理由②|業務理解の限界を見落としやすい
どれだけ優秀なベンダーでも、あなたの会社の業務を完全に理解することはできません。
- 現場の空気感
- 暗黙の判断(社内暗黙ルール)
- 人に依存している部分(〇〇さんしかわからない)
これらは、外部の人間には見えにくいものです。そして、外部の人間に説明しづらいものです。
にもかかわらず、「御社の業務は完全に理解しました」というベンダーの言葉を鵜呑みにすると、重要な前提が抜け落ちたまま設計が進みます。
理由③|「判断しない状態」が常態化する
一度ベンダー任せにすると、社内でこんな状態が生まれます。
- 仕様はベンダーに聞く
- 改善もベンダーに相談する
- 判断材料もベンダーからもらう
この結果として社内に根付くのは、
- 自社で判断できない(判断しない)
- 立ち止まることが怖くなる(何かやらないとダメな気がする)
- 惰性で進む(提案のまま進む)
自社の業務を効率化するIT導入が、自社でコントロールできないものになります。
ベンダーに任せていい範囲
ベンダーに任せていいのは、次の領域です。
- 技術的な設計
- システムの構築方法
- 実装・設定・開発
つまり、「どう作るか」の部分。
技術の選定や実装は、専門家に任せた方が効率も品質も上がります。
戸建て住宅も同じですよね?間取りや内装や外装、設備は自分たちの理想や暮らしやすさを「自分で決めて判断」します。判断して決めたことを設計士さんへ伝えて設計図を作ってもらい、設計図を元にして大工さんが建てる。それぞれが自分の領域、自分の専門分野を行うから、良いものができあがるのです。
任せてはいけない範囲
私も過去はベンダーに居ました。だからその経験から言えますが、絶対に任せてはいけないのは、次の領域です。
- 何を改善するか(あなたの会社の人間じゃないので、ベンダーはわかりません)
- どこから着手するか(あなたの会社の人間じゃないので、ベンダーには理解できません)
- 何をやらないか(ベンダーは導入することが仕事なので、やらない判断はしません)
- 成功・失敗の基準(ベンダーの成功は導入、失敗は案件が決まらないことです)
これらはすべて、会社側が決めるべき判断です。ベンダーに任せてはいけません。
任せることで、IT導入は一歩ずつ失敗に近づきます。
IT導入がうまくいっている会社
ベンダーを信頼しています。しかし、ベンダーに依存はしてません。
- 判断は自社
- 実装はベンダー
役割は明確です。この分担ができているかどうかが、IT導入の成否を分けます。
どうすればベンダー任せを防げるのか
大切なのは、導入前に判断軸を持つことです。
- 業務の全体像
- 課題の優先順位
- 投資の目的
最低限これら3つが整理されていれば、
- ベンダーの提案を評価できる
- 断る判断ができる
- 見直すタイミングを決められる
ベンダーは、「任せる相手」「丸投げできる相手」ではなく、自社がコンロールして「専門分野の力を使ってもらう相手」です。
危険なのはベンダーではなく「任せ方」
ITベンダー任せが危険なのは、ベンダーが悪いからではありません。
- 判断を外に出した
- 優先順位を決めなかった
- 主導権を手放した
この状態が、IT導入を行き詰まらせます。
ベンダーって、「あいまいな話」で進めないといけないケースが多いんです。経験から何とかしますが、何とかならないこともあります。
ベンダーも、導入先の会社から判断した内容や優先順位、やるべきこと/やらないこと、が伝えられると大変仕事がしやすくなります。
ITは、経営判断の延長線上にある道具だと思ってください。
さいごに
もし今、
- ベンダー主導で話が進んでいる
- 提案内容を評価できない
- このまま進めていいのか不安
と感じているなら、それは今回お話した内容に近づいている証拠。危険信号です。
立ち止まって、「何を任せて、何を任せないか」を整理することが、IT導入を立て直す第一歩になります。
