基幹システム導入に興味はあっても、中小企業特有のリソースや体制の制約によって、大企業のように進められないという現実があります。

今回は私のこれまでの現場経験から、中小企業さんに多い「導入時の課題や障壁」についてお話します。基幹システム導入を検討されている会社さんの参考になれば幸いです。

コストの問題

いきなりですが、基幹システム導入を行うと以下のコスト増が見込まれますので負担になります。

  • 初期導入費用(大手ベンダーさんに依頼すると結構高い)
  • 毎月のシステム使用料(最近はサブスク型になっていることが多い)
  • 毎月の保守料(システムが動いている間は基本的に発生することが多い)

こういったコストに対して効果が素早く見えればいいのですが、なかなか見えづらいものです。

特に従業員数10名未満の会社さんですと、費用対効果が見えづらいですし、投資の回収に時間がかかります。

コスト面の負担は避けられません。先行投資と考えて長い目で見るか、負担できる費用内でシステム導入できないか検討されることをおすすめします。

※初期導入費用や毎月のシステム使用料の一部は「IT補助金」を使えることがありますので、ベンダーさんに相談されることをおすすめします。中堅以上のベンダーさんなら、補助金申請の専門部隊がシステム開発や営業とは別にいらっしゃるので安心して申請のお手伝いをお願いできます。

人材不足・ノウハウ不足

これがなかなか解決しない課題であり大きな障壁でもあります。

  • 社内にITの専門知識を持った人がいない(機械に詳しい人はいるがソフトウェアで仕組みを作れる人は少ない)
  • ITベンダーの話を正しく理解して対話できる人がいない(商文化が違うので翻訳する意識が必要)
  • 本番稼働した後の保守やトラブル対応が社内でできない(他人の作ったシステムを理解するのは至難の業)

社内で全部出来れば「問題ゼロ」なのですが、非IT業界の中小企業さんにこれらのスキルや知識を持った人が入社してくる可能性は「ほとんどゼロ」です(持っていたら普通はIT企業へ入るか独立する)。

ですから、最初から

  • 自分達で何ができるのか
  • 自分達に何が不足しているのか

この2つを考え、足りない人材やノウハウは外部からサポートしてもらうのがベストだと思います。

わかったフリをしてITベンダーと話を進めても、要件定義やフィット&ギャップが正しくできないので結果的に「何ができるのかわからん」「何が必要なのかもわからん」まま導入が進み、

使えないのに毎月高いお金の支払いがつづく~!

ということになります(ひとつの会社に同じ業務用のシステムが3つのベンダーさんから5年毎に導入されていたところもありました)。

フィット&ギャップができない

フィット&ギャップとは、現場の業務が導入しようと考えているシステムで

  • 実現できること
  • 現場の方法を変えれば実現できること
  • どうやっても実現できないこと

こうしたことを一つ一つ洗い出して検証することを言います(めちゃくちゃ手間ですが、肝心かなめの部分です)。

この部分をしっかりやっておかないと、いくら高価で多機能なシステムが完成して導入されても、

  • 現場の業務の流れとシステムの仕様が合わない
  • 使いづらい(使えない)
  • 前より不便になった(前は出来ていたのに今後のは出来ないの?)

こういうことになり「現場では不満が爆発」します。そうすると「使えないモノにお金を使って!それならボーナス出してよ!」という感情が芽生え「やっぱり前のままやろうよ」ということになります(静かな反乱)。

ここが大手企業とは大きく違うところです。

大企業の場合ですと一度「導入する」と決まれば、圧倒的なトップダウンパワーで否応なしに基幹システムの利用が各部署から関連子会社まで強制されます。

「絶対に使わない!」という部署や人、関連子会社が存在したとしても、何らかの政治的理由によってそうした部署や人や会社は排除され(もしくは現場から遠いところに置かれ)、結果的に「全体で使っている」ことになります。

カスタマイズの難しさ

業務に合わない部分は、システムをカスタマイズして業務に合わせる。こういう方法があります。

30年以上前から変わっていないのも不思議ですが、どうも日本企業は大手から中小企業さんまで「カスタマイズ」が大好き(自社専用が好きなのかも)。でも、カスタマイズにはこんな問題を含んでいます。

  • カスタマイズすると費用が高くなる
  • カスタマイズすると開発時間が増える
  • カスタマイズするとバージョンアップが簡単にできなくなる

システムをカスタマイズして業務に合わせるよりも、まずは「システムの動きに業務の流れを変えて合わせられないか」を考えましょう。当然、今のままでは変えられませんから、業務改善や改革が必要になります。

  • 昔から(前から)こうだから(いつから?)
  • 前任者がやっていたから(前任者の勝手なルールじゃないの?)
  • 〇〇さんの承認ハンコは外せないから(なぜ?どうして?)

こういうの「全部なし」で考えましょう。社内での忖度は、システム導入に全く必要ありません。

連携が難しい

中小企業さんの場合、部分最適化と呼ばれる方法が選ばれやすいものです。

例えば、こんな風になっていませんか?

  • 販売管理はP社のもの
  • 会計管理はO社のもの
  • 人事管理はF社のもの

そこへ新たにD社から基幹システムを導入しよう。となると、全部バラバラなので手間ばかり増えることが予想できます。

ですから、D社の基幹システム導入では、P社とO社とF社との連携ができるのかを忘れずに検討材料に含めましょう。

連携できないと

  • 二重入力
  • 転記ミス
  • マスターデータの更新ミス

こういう面倒なことが発生します。

導入期間と運用定着が難しい

  • 導入から本番運用までの期間が長い(最低でも半年、一般的には1年必要)
  • 上記期間は過去のシステムとの「並行運用」が安心
  • 社員教育が追いつかない(ベンダーさんにお願いするのがおすすめ)
  • 初期トラブルが多いと「失敗」のレッテルが貼られ誰も使わないようになる

ベンダーさんや外部の専門家を交えて計画を練り、できるだけスタッフさんの負担を減らすように進めていくことが大切です。

さいごに

中小企業さんが基幹システム導入をする場合、おおよそ今回お話した同じような課題や障壁が出てきます。

ここがポイントでして、基幹システム導入を長年現場でやってきた人間ですと、課題と障壁を前もって知っていますから、解決する方法も何パターンか知っています。

こういう外部の専門家を早いタイミングでプロジェクトへ参画依頼し、自社側の視点でベンダーと話をしたり、システム設計に参加してもらったり、移行や運用計画の作業代行などを依頼することで成功する可能性を高めることができます。

IT企業へ入社できるような人材を募集して応募を待つよりも、外部の専門家へ依頼した方がスムーズに進むと思います。特にフリーランスや個人事業主ですと、費用面でも「依頼費用=外注費」ですから会社としては経費勘定になります。さらに自社従業員ではありませんから社会保険関係の負担もありません。