社内システムの開発や導入は、多くの企業が一度は経験する大きなプロジェクトです。
- 業務効率化
- 情報共有
- DX推進の一部として
こうした目的で導入されることが多いです。
しかし、実際に導入すると
- 開発したのに使われない
- 導入後に現場の不満が増える
- 追加開発が止まらない
といった問題が発生するケースも少なくありません。
そして多くの場合、その原因は「技術」ではありません。社内システム開発の失敗は、判断や構造の整理不足から生まれることが多いのです。
今回はシステム開発40年の現場経験があるから言える、社内システム開発・導入でよくある課題と、その背景にある問題を解説します。
社内システム開発・導入がうまくいかない会社は多い
社内システム導入の現場では、次のような状況がよく見られます。
開発したのに使われない
システムは完成したものの、現場では従来の方法が使われ続ける。
Excelや手作業が残り、結果的に二重運用になります。
導入後に現場の不満が増える
導入前は期待されていたシステムが、導入後には
- 入力が増えた
- 作業が遅くなった
- 業務に合っていない
といった声に変わることがあります。
追加開発が止まらない
導入後、
- 例外対応
- 部門ごとの要望
- 新しい機能追加
こうしたことが続き、システムがどんどん複雑になります。
この話、珍しいことではありません。むしろ、言わないだけで多くの企業で似たような課題が発生しています。
社内システム開発・導入でよくある5つの課題
社内システムがうまく機能しない会社には、いくつかの共通点があります。
課題① 目的が曖昧なまま開発が始まる
システム開発の理由が、
- DXを進めたい
- 業務を効率化したい
- システムが古い
といった抽象的なものになっているケースがあります。
しかし目的が抽象的なまま(曖昧なまま)プロジェクトが始まると、
- 何を優先すべきか
- どこまで作るべきか
- 成功とは何か
が決まりません。結果として、判断基準のないプロジェクトが動いていることになります。
課題② 要件定義が「機能一覧」になる
システム開発で重要なのが要件定義です。しかし実際には、
- 〇〇機能
- △△機能
- □□機能
要件ではなく「機能」を羅列したリストになってしまうことが多い。
本来の要件定義とは、
- 業務の流れ
- 判断基準
- 例外処理
といった業務構造を整理する作業です。
ここが整理されないまま機能だけ決めると、現実の業務とズレたシステムになります。
課題③ ベンダー主導で設計が進む
社内にIT専門人材が少ない場合、ベンダー主導でプロジェクトが進むことがあります。
ベンダーはシステムやツールの専門家ですが、
- あなたの会社の業務の背景
- 現場の判断基準
- 例外対応
現場で行われていることまで完全には理解できません。
その結果、ベンダー主導で進むと導入されたシステムやツールに業務を合わせる構造になります。
課題④ 現場説明が後回しになる
社内システム導入では、次の順序になることがよくあります。
- システム選定
- 開発
- 導入直前に現場説明
この順番だと、現場はシステムを使う側という立ち位置になってしまいます。
しかし本来は、「現場こそが業務の主体」です。現場の理解がないまま導入すると、
- 旧運用が残る
- 二重入力が発生する
- 定着しない
という問題が起きます。当然と言えば当然なのです。
課題⑤ 成功基準が決まっていない
意外と多いのが、成功の定義(基準)がないプロジェクトの進行。
例えば、
- 作業時間が減ること
- 残業が減ること
- 情報共有が進むこと
どれを成功とするのかが決まっていないのです。
成功基準がないと、
- 導入後の評価
- 改善判断
どちらもできません。「何となく上手くいっているのではないか」という曖昧さで終わります。
なぜ誰も悪くないのに失敗するのか
社内システム開発の失敗は、誰か一人の責任ではないことがほとんどです。
- 経営は前向き
- 現場も協力的
- ベンダーも誠実
それでもプロジェクトがうまくいかない。その理由は、それぞれの進捗中に判断を整理する役割が存在しないことです。多くのプロジェクトには、
- 技術設計
- スケジュール
- 予算
この3つは必ずあります。しかし、「業務構造や判断基準を整理する工程」が設けられない。または、後回しにされる。放っておかれたまま。こんなケースが多いのです。
本来、社内システム開発の前に決めるべき3つのこと
システム開発を成功させるためには、開発前に次の3つを決める必要があります。
① 何を変えるのか
業務全体を変えるのか、一部の工程だけなのか。
範囲を決めないまま開発を始めると、プロジェクトは拡大し続けます。
② 何を変えないのか
DXやシステム導入では、「変えること」ばかりが注目されます。
しかし重要なのは「変えない部分を決めること」です。例えば、
- 現場判断
- 顧客対応
- 特定業務の例外処理
③ 成功の定義
システム導入が成功したと言えるのは、どの状態なのか。
例えば、
- 作業時間の削減
- 情報共有の改善
- 判断スピードの向上
会社によって様々ですが、何らかの明確な基準を作る必要があります。
社内システム導入を成功させるポイント
社内システム導入の成功は、技術ではなく準備段階で決まることが多いです。
特に重要なのは、
システム選定や機能洗い出しの前に業務構造を整理すること
- 業務の流れ
- 判断のポイント
- 例外処理
を整理してから設計することで、システムは現場に合ったものになります。
さいごに:社内システムの課題は技術ではなく構造
社内システム開発・導入の課題は、
- 技術不足
- ITリテラシー
- ベンダーとの相性
だけではありません。
多くの場合、業務構造と判断の整理不足から問題が生まれます。
もし今、
- 社内システム開発を検討している
- 導入がうまくいっていない
- 作り直しを考えている
こういう状態であれば、まずはシステムではなく業務と判断の構造を整理することから始める必要があります。
それが、社内システム導入を成功させる最も確実な方法です。
