IT投資で「失敗した」と気づくのは、いつも後になってから。
IT投資は、導入した瞬間に成否が分かるものではありません。多くの会社では、次のような形で “後悔” が始まります。
- 導入当初は特に問題がなかった
- 大きな反対もなく、現場も黙って使っている
- しかし数ヶ月後、「効果は?」と聞かれて誰も答えられない
このときに初めて、「本当に必要だったのだろうか」という疑問が生まれます。
IT投資の失敗は、ツールの性能やベンダーの問題ではありません。ほとんどの場合、導入前の “判断” で決まっています。
今回は経験から見えている、中小企業がIT投資で後悔しないために、導入前に必ず確認すべき5つの判断基準をお伝えします。
どうしてIT投資は「後悔」になりやすいのか
IT投資には、他の設備投資とは違う特徴があります。
- 始まったら途中で止めにくい
- 効果が見えにくい
- 「もう少し使えば良くなる」と判断を先延ばししやすい
つまり、間違った判断でも、しばらくは “正しそうに見える” のです。
だからこそ、「導入前に何を基準に導入を判断したのか」が、その後を左右します。
判断基準①|「何を解決したいのか」を言葉にできているか
最初に確認すべきなのは、非常にシンプルです。
「このIT投資で、何を解決したいのかを誰にでも説明できますか?」
経営層にも、スタッフにも、説明できることが大切です。もし、
- 業務が大変だから(どこの部署の、どの業務が?)
- 効率が悪そうだから(どこの効率?今はどんな状態?)
- 何となく他社から遅れている気がするから(ムードで判断)
この状態での投資は、ほぼ確実に後悔につながります。重要なのは、
- どの業務の
- どの部分で
- 誰が、どのように困っているのか
この3つが言語化されていることです。
課題が曖昧なままのIT投資は、効果も曖昧になります。
判断基準②|業務整理が終わっているか
IT投資の前に、必ず立ち止まってほしいポイントがあります。それは、
「現在の業務の流れを、最初から最後まで説明できますか?」
多くの会社では、
- 現場ごとのやり方
- 人による判断
- 例外対応
裁量で動いていることが積み重なり、業務の全体像を誰も把握できない状態になっています。
この状態でシステムを入れると、
- 属人化した業務がそのままシステム化される(人がシステムに変わっただけ)
- 例外処理が増え続ける(例外処理は今までと一緒+システムへの例外処理入力が増える)
- 「なぜこうなっているか分からない」仕組みが完成する(ベンダーしかわからない)
IT投資の前に必要なのは、ベンダー選定やツール選定ではなく、業務の整理です。
判断基準③|「やらない選択」を先に決めているか
「やらない選択」は大切なのですが、不思議と多くの会社では行われません。
だから、IT投資で後悔する会社に共通する特徴があります。それは、「全部やろうとする」こと。
- あれも出来るらしいから便利そう
- これも将来使うかもしれないから入れておこう
- とりあえず全部入れておけば間違いない
この判断が、投資額と複雑さを一気に膨らませます。
後悔しない会社は、逆です。
- 今回はやらない業務
- システム化しない範囲
- 将来に回す判断
「やらない」という言葉がネガティブなイメージだから敬遠されるのかもしれませんが、こうした内容をきちんと導入前に決めています。
「やらない選択」を先にすることで、IT投資は初めてコントロール可能になります。
判断基準④|ベンダーに任せてはいけない判断を理解しているか
IT投資において、「任せていいこと」と「任せてはいけないこと」があります。
任せていいのは、
- 技術的な設計
- 実装方法
- システムの作り方
専門知識が必要となる実作業の部分です。
任せてはいけないのは、
- 業務の優先順位
- 何を改善すべきか
- 投資に見合うかどうかの判断
これらは、会社の中でしか決められません。
この判断までベンダーに委ねた瞬間、IT投資は「自社で管理できないもの」になります。
判断基準⑤|導入後に「見直せる余地」を残しているか
最後の判断基準は、将来に関わるものです。
「このIT投資は、後から軌道修正できますか?」
- 小さく始められるか
- 変更の判断を自社でできるか
- 改善が止まらない構造か
完璧を目指したIT投資ほど、変更できず、後悔につながりやすくなります。
ITは、一度で完成させるものではありません。見直せる前提で設計されているかが重要です。
IT投資で後悔しない会社が見ているもの
IT投資で後悔しない会社は、ベンダーやツールよりも先に、次のことを見ています。
- 会社の課題が言語化されているか
- 業務が整理されているか
- やらない選択ができているか
- 判断をベンダーへ丸投げして手放していないか
- 将来の修正余地があるか(修正することが前提になっているか)
IT投資は、技術の問題ではありません。経営判断の問題です。
さいごに
もし、このチェックリストを見て、
- 半分も自信がない
- いくつか引っかかる
- 「今の状態で進めていいのか」と感じた
のであれば、それは導入をやめるべきサインではありません。
整理することから始めればいいだけです。
ツールを入れる前に、ベンダーを決める前に、判断できる状態を作る。それが、IT投資で後悔しないための、最も確実な方法です。
