私は、これまでの現場経験からDXは、次のようなことだと感じています。
「DXは技術導入ではなく、経営判断の連続である」
DXが失敗した会社は「途中」で間違えたわけではありません
DXがうまくいかなかった会社の多くは、途中で大きなミスをしたわけではありません。これは経験がハッキリと言えます。
- 計画通り進めた(間違いありません)
- 想定外のトラブルもなかった(しっかりとしたマネジメントの結果です)
- ベンダーとも関係は悪くなかった(真剣に取り組んだ結果です)
それでも、数年後に残るのは、
- 効果が分からない仕組み
- 改善できない業務
- 誰も全体を説明できない状態
このように感じるDXの失敗は、ほぼ例外なく「最初の判断」から始まっています。
今回は、DX全体を俯瞰しながら、中小企業が最初に踏みがちな判断ミスを整理していきます。
DXとは何かを、最初に誤解している
最初の判断ミスは、「何をDXだと思っているか」です。「DX」をはじめとした英文の頭文字だけを使った暗号のような短縮された言い方は、受け取る人によって「何を指しているのか」が曖昧になりやすいものです。
例えば、今回の「DX」の場合、次のようなイメージを持たれている人が多いと思います。
- ITツールを入れること(間違いではありません)
- システムを刷新すること(これも間違いではありません)
- データを集めること(これもDXのひとつです)
これらはDXの一部ではありますが、DXそのものではありません。
DXとは、業務・判断・仕組みを、変え続けられる状態を作ること。
この前提を外した瞬間、すべての判断がズレ始めます。
判断ミス①|「正解のDX」がどこかにあると思っている
DXを始める会社が、最初にやってしまいがちなのがこれです。
”うちにピッタリと合う正解のDXを教えてほしい”
しかし、DXに完成形はありません。また、最初から何もしなくともピッタリと合う仕組みはありません。
なぜなら、
- 業務は変わる
- 市場も変わる
- 人も変わる
当然のことです。にもかかわらず、
- 完璧な設計
- 将来まで見据えたシステム
- 全体最適な構想
こうしたことを最初に求めると、動けなくなります。
私が相談を頂いた中でも、最初から完璧を目指しておられた企業様がいらっしゃいました。この企業様、かなり長い時間をつかって「あーでもない、こーでもない」と社内チームで検討を続け、複数のベンダーともミーティングを続けておられました。
結果、何年も何も進まなかった。というでした。
ご相談のときのお話から原因がわかりましたので、「最初から完璧を求めていませんか?」と質問しますと、「はい」というお答えが。そのとき、今回のブログでお話する内容をお伝えしましたところ、腑に落ちることがあったため、一旦はDXという固まった考え方やイメージをゼロベースに戻し、少し緩い考え方やイメージで進めるように方向転換されました。
少し緩めることで、余白を認識しながら「実際に使える仕組み」を検討できるようになられました。
判断ミス②|業務より先にツールを見てしまう
次に多いのが、業務を見ずにツールを見る判断です。
- 流行っている(広告で何度も耳にする)
- 他社が使っている(ネットニュースで同業他社が導入に成功したPR記事を見た)
- 補助金が出る(必要かどうかよりも「補助金貰えるから!」が先行)
これらを理由にツールを選ぶと、業務がツールに引きずられます。これ、逆です。
本来の順番は、
- 業務を把握する
- 課題を言語化する(見える化する)
- 必要ならITを使う(ココ大事!)
この順番を逆にすると、DXは必ず歪みます。
この判断ミスは、DXという言葉が出てくる前から常に上位を占めるミス。だからこそ、多くの失敗事例があります。
例えば、最近ですと「ノーコードツール」を使って社内専用システムを作ろう!という流れからツールを導入。
しかし、ツールを導入する前に、自社の業務フローに合っているのかどうか「見える化」しておらず、また、どの部署の業務に使うのかも決めていなかったため、「導入しただけ」で頓挫。
結果、毎月のサブスク費用だけが出ていくという、何とも困ったことになっていた企業様がありました。
ご相談いただいた結果、ノーコードツールが必要なのかどうかも含めて検討。使える業務と使いづらい業務に分けることで、利用アカウント数も減らすことができ、最低限の費用で一部ではありますが内製化を実現し、情報の共有がスムーズに進むようになりました。
判断ミス③|「全部やる」判断をしてしまう
DXを始めると皆さん、つい欲張りになります。
- せっかくなら全部やる
- 将来を考えて広くやる
- 後から作り直したくない
しかし、この判断がDXを最も重くします。
DXで重要なのは、
- 今やらないこと
- 後回しにすること
- 手を付けない領域
ネガティブな印象を持たれるかもしれませんが、この3つを決めることです。
複雑化したDXをイキナリ全部導入すると、現場は混乱します。すると「使えない」という意見が噴出し、誰ということなく使われないことになります。
判断ミス④|ベンダーに判断まで委ねてしまう
DXでは、専門外のことが多く発生します。
その結果、
- 判断が怖くなる
- 任せたくなる
気持ちは自然です。わかります。
しかし、
- 何を変えるか
- どこを優先するか
- どこまでやるか
この判断までベンダーに委ねると、DXは制御不能になります。なぜなら、自分達の会社で「できないこと」「必要ではないこと」まで含まれてしまうからです。
判断ミス⑤|「変化を前提にしていない」
最後の判断ミスは、最も見落とされがちです。
それは、DXを一度で終わらせようとすることです。
- 一回で完成させたい(その気持ちわかります)
- 作り直したくない(わかります)
- 失敗したくない(当然です)
しかし、この考え方では変化に耐えられません。
DXは、やり直せる構造を作ることが目的です。
DXがうまくいく会社は、最初に何を決めているのか
DXがうまくいっている会社は、次のことを最初に決めています。
- 判断は自社側でする
- 小さく始める
- 途中で見直す
- 完璧を目指さない
これらは、ニュースに出てくる「企業の成功事例」のように派手ではありませんが、DXを継続させるための前提条件です。
DXの成否は「導入」ではなく「最初の判断」で決まる
DXが失敗する中小企業には、共通する最初の判断ミスがあります。
- DXをIT導入(ITツールの導入)だと思った
- 正解を探した
- 業務よりツールを優先した
- 判断を手放した
- 変化を前提にしなかった
DXとは、技術の話ではなく、経営判断の積み重ねです。
さいごに
もし今、
- 何から手を付けるべきか迷っている
- この進め方でいいのか不安
- 一度立ち止まりたいと感じている
のであれば、それは正しい感覚です。
DXは、立ち止まって考えられる会社だけが続けられます。
