最初に申し上げますと、問題は「現場の抵抗」ではない。ということです。

実際は、「使ってもらえない」のではなく「使えない」のです。システム導入された経験がある会社さんでは、こんな言葉を聞いたことはないでしょうか。

  • 「現場が使ってくれない」
  • 「慣れれば使うはず」
  • 「抵抗があるだけだと思う」

しかし、実際に多くの現場を見てきて分かるのは、現場は “使いたくない” のではありません。使えないのです。

今回は、私の経験を踏まえて、システムが現場で使われなくなる本当の理由を、感情論ではなく構造として整理します。

よくある誤解|原因は「現場のITリテラシー」ではありません

使われない理由として、よく挙げられるのが次のようなものです。ネットニュースでも、同じようなものが何度も取り上げらています。

  • 現場がITに弱い
  • 年齢層が高い
  • 新しいことを嫌がる

確かに一因ではありますが、「使わない」ことの本質ではありません。

なぜなら、

  • 同じ現場が
  • 別の仕組みでは
  • 普通に工夫して使っている

というケースが非常に多いからです。この現象、大手企業でも同じことがありました。○○部門は「使わない」のに、△△部門は「使っている」状態。

問題は「人」ではなく、システムの前提と業務の現実がズレていることです。

理由①|業務の前提がシステムと合っていない

システムは、必ず次のような「業務の流れ」を前提に作られています。

  • この順番で処理する
  • この情報が入力されている
  • この判断は事前に終わっている

しかし現場では、

  • 順番が前後する
  • 情報が揃わないまま進む
  • 判断は後から決まる

前提と現実にズレがあります。このズレを無視したシステムは、現場にとって「使いづらい」ではなく「業務を止める悪の存在」になってしまいます。

事例をお話しますと、建設業に多いズレとして「工事の受注と作業」があります。一般的には、

  • お客様から営業担当へ発注依頼(受注)
  • 営業担当が受注内容を入力し、工事予定を技術担当と検討
  • 決まった予定で技術担当が現場で作業

大まかにこういう流れですが、発注依頼が届く前に「とにかく急いでいるので、明日の朝から現場へ入ってほしい」と要望されるケース。

営業担当が受注処理を済ます前に、技術担当は朝一で現場へ行くことになるため、受注情報が入力されていないと、現場担当は身動きが取れないまま悩むことになります。

こういう例外的な処理まで考えられたシステムでないと、「使えない」というレッテルを貼られてしまいます。

理由②|「入力する意味」が現場に伝わっていない

現場が最も敏感なのは、ここです。

「これ、何のために入れているんですか?」

  • 入力が増えた
  • 手間が増えた
  • でも自分たちの仕事は楽にならない

この状態になると、現場は最小限の入力しかしなくなります。

決して怠慢ではありません。合理的な行動です。

入力の目的が、

  • 誰のためなのか
  • 何に使われるのか

が説明されていないシステムは、必ず形骸化します。

これも事例になりますが、過去にこういうケースがありました。

システムを導入したのに、

  • 「入力はしているが、実際は別管理になっていた」
  • 「帳票やExcelが残り続けた」

手間が増えるので、元に戻っている状態です。

理由③|例外対応が現場に丸投げされている

設計時には想定されていなかったことが、現場では必ず起きます。これ、普通です。

  • この案件だけ特殊
  • この取引先だけ違う
  • この作業だけは例外

そのたびに、

  • システムでは処理できない
  • 手作業で対応する
  • 後で入力し直す

こうした運用が積み重なると、現場は次のように判断します。

「最初から使わない方が早いやん!」

これは自然な判断です。

例外が増えすぎると、導入されたシステムが「正」なのか、例外対応で使っているExcelが「正」なのかわからなくなります。すると、前から使っていた方が使いやすいので「正」となり、後から導入されたシステムは形式として「あるだけ」になります。

理由④|「変えてはいけない業務」を変えてしまっている

システム導入は、業務を変えることが前提になりがちです。

しかし、

  • 現場の判断力
  • 経験に基づく対応
  • 暗黙の調整

会社には、変えてはいけない部分があります。もし、そうした部分まで無理に型にはめると、現場は強い違和感を持ちます。

その結果、

  • 表向きは使っている、、、が
  • 裏では別のやり方が残る

見えづらい「二重構造」が生まれて定着します。

理由⑤|「使われない」のではなく「黙っている」

最も危険な状態です。

  • 文句は出ない(上手くいっている証拠だ!)
  • 大きなトラブルもない(スムーズにいってる証拠だ!)
  • でも活用されていない(へっ?ウソ?・・・)

現場が黙るのは、使えるから納得しているのではありません。

何を言っても使えるようにならないので「諦めた」からです。

この状態に入ると、改善の声は二度と上がらなくなります。

システムが使われる会社は、何が違うのか

使われているシステムには、共通点があります。

  • 業務整理が先に行われている
  • 例外を前提に設計されている
  • 「やらないこと」が決まっている
  • 現場が判断に参加している

システムは「導入したかどうか」ではなく、「どう作る前提を決めたか」で決まります。

つまり、使われない理由は、導入前にほぼ決まっていると言えます。

システムが使われない原因は、

  • 現場の問題
  • 意識の問題
  • 慣れの問題

ではありません。

  • 業務整理をしなかった
  • 判断をベンダーに丸投げした
  • 現実を設計に反映しなかった

この積み重ねが、「使われないシステム」を生みだします。

さいごに

もし今、

  • システムは入れた
  • でも効果が見えない
  • 現場が静かすぎる

と感じているなら、それは “失敗” ではありません。

前提を見直せば、立て直せる状態です。

「システムを直す前に、業務と判断の整理から始める。」それが、現場が再び動き出す唯一の方法です。