在庫管理のミスは、現場の混乱やコスト増につながります。クラウド化することで作業効率を上げつつ、ミスを減らすことが可能です。今回は在庫管理を何とかしたい企業様向けに、ミスのリスクや改善方法、クラウド導入時のポイントをお話します。
紙・Excel管理による在庫ミスのリスク
在庫差異による「欠品・売上機会損失」
紙やExcelはリアルタイム更新がされないため、
- 実際には在庫がないのに「ある」と誤認 → 欠品・納期の遅延
- 売れる商品を売ることができずに逃す → 売上機会の損失
こうしたビジネスでの「もったいない」ことが発生しやすいです。特に得意先が大手の場合、信用低下につながることもあります。
過剰在庫・滞留在庫によるキャッシュフロー悪化
在庫数が正確に見えないと、地味に、しかし、じわじわと困ったことになります。
- 過剰発注を繰り返している(あるのに注文するなよ!)
- 不良在庫の放置(場所ばかり使ってる!)
こうした困ったこと、起こっていませんか?起こりやすくなっていませんか?放っておくと資金繰りを圧迫する原因にもなります。
メーカーさんなら原材料のムダ、倉庫業なら保管スペースの圧迫という形で利益を削る原因になっていることもあります。
人為的エラー(転記ミス・入力漏れ・集計間違い)
知識豊富なコンサルタントさんですと「ヒューマンエラー」と呼ぶ人もいます。
紙やExcelは手作業が多いため、次のようなエラーが発生しやすいです。
- 誤入力
- 計算式の崩れ(これ、多い)
- 版違いファイルの使用(最新版がわからない)
どれも人為ミスが原因となって起きる仕組みになっていることをご存じでしょうか。
そして困ったことに、こうした人為ミスは発見が遅れるもの。そのため、気付いた時には損失が出ているケースが多いです。
業務属人化による「ブラックボックス化」
これで困っている企業さん、多いと思います。
Excelファイルの作り手や在庫担当者が退職・休職すると、、、
- どのファイルが正しいのか誰も分からない(あるある)
- 使い方の手順が担当しか理解していない(これもあるある)
- 業務の流れが変わったけれど誰も修正や改善できない(お手上げ)
こんな問題、あなたの会社でも一度は起こったことがあると思います。経営リスクが跳ね上がる原因になりますし、昨今聞くことが増えた「業務継続性(BCP)」の観点でも危険視されていることです。
トレーサビリティ不足によるクレーム・法規対応リスク
紙・Excelでは、
- ロットの管理
- 入出庫履歴の追跡(どこから入って、どこへ出て行ったのか)
- バッチ単位の品質トレース
こうしたことが困難になります。クレームが発生すると原因究明が遅れますので信頼度も低下。食品・化学・部品などの場合は法規制対応(回収対応)に影響するため、経営者の方は特に恐れていることではないでしょうか。
クラウド化で改善できること
先ほどの5つの在庫管理リスクについて、クラウド化で改善できるポイントをそれぞれ3つずつにまとめました。
「具体的にどう改善されるのか」を明確に記載していますので参考にしてください。
欠品・売上機会損失の改善ポイント(クラウド化)
① 在庫情報のリアルタイム共有
入出庫データがリアルタイムで更新されるので、営業・購買・倉庫が同じ情報を見ることできます。各担当部署が同じ数字を見ますので誤った在庫数の把握を防げます。
② 自動アラート(在庫閾値・リードタイム管理)
安全在庫割れやリードタイム遅延をシステムが察知して通知できます。欠品リスクを事前に察知できます。発注点管理が楽になりますね。
③ 需要予測・発注補助機能
少し高度な使い方になりますが、クラウド化してAIを活用すると出荷履歴や季節性を基にした自動発注/需要予測ができるようになります。すると、売れる商品を切らさず売上機会損失を抑える効果が期待できます。
過剰在庫・滞留在庫の改善ポイント(クラウド化)
① 在庫回転率や滞留日数の自動可視化
クラウドシステムで在庫の動きをグラフ化すると、滞留在庫や「全く動いていない在庫」を早期に発見できるようになります。
② 発注点管理の自動化
適正在庫を保ちながら過剰発注を防ぎやすくなります。これは資金繰りを改善するポイントになります。
③ 複数倉庫・複数拠点一元管理
複数倉庫・複数拠点の在庫数をクラウド上で統合することで、重複発注や余剰在庫が発生しづらくなります。また、手元の倉庫に無くても別の倉庫に在庫があるのなら、社内での動かし方を変えることで対応できます。
人為的エラー(転記ミス/入力漏れ)の改善ポイント(クラウド化)
① スキャン入力・バーコード/QR化による自動入力
紙やExcelへの手打ちを減らし、誤入力リスクを大幅削減できます。この方法ですと、誰でも簡単にできるようになるというメリットもあります。
② 入力制御・バリデーション
難しい言い方です。入力制御やバリデーションという言葉、ソフトウェア開発で使われ出した言葉なので、一般的には馴染の薄い言葉だと思います。
一般的な言葉にすると「入力ミスを受け付けない仕組みにする」ということです。
例えば、クラウド化するとシステムが不正データ(桁違い、未入力など)を弾くため、入力ミスが構造的に減ります(正しく入力しないと、次へ進めません)。
紙・Excelのように「好きなように、なんでも書ける(入力できる)」ことができません。これを「面倒」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、人為的エラーを防ぐには最も良い方法なのです。
③ ワークフロー管理で記録が一本化
入庫→検品→棚入れ→出庫が一つの流れで記録されますので、二重入力・転記ミスを防げます。
業務属人化・ブラックボックス化の改善ポイント(クラウド化)
① 権限・ログ管理で作業内容が明確に残る
誰が、いつ、どの作業をしたか履歴が残り、担当者が変わっても運用継続が容易になります。セキュリティの観点からも必要になっているポイントです。
② マニュアルや業務フローのシステム内標準化
Excel依存の個人ノウハウではなく、クラウド上に標準化された手順が残せます。
③ 拠点間で統一されたルール・フォーマットで運用できる
担当者が変わっても同じ作業手順で運用可能になりますので、組織としての品質が安定します。
拠点毎に「うちは他とは違うから」「うちが管理しているものは特別だから」というような意見も出てきますが、多くの場合「特別」なことはそんなにありません。かみ砕いてワークフローを精査していけば、統一されたルールやフォーマットで運用できるものです。
反対意見の大半は
- 特別なことをしている自分達というアピール
- 今やっていることを変えたくない
- 考えを変えるとか面倒
こういう理由がほとんどです。
トレーサビリティ不足(クレーム・法規対応)の改善ポイント(クラウド化)
① ロット/シリアルの履歴自動追跡
入庫ロット・出庫ロットの紐づけが自動で残るため、クレーム発生時に即時追跡が可能になります。
② 監査・法規対応用のデータをワンクリックで出力
食品・化学・医薬向けのトレーサビリティレポートを簡単に出せるようになっているクラウドがほとんどです。
③ 誤出荷を防ぐロットチェック・照合機能
出荷時にロット照合を行い、ロット違いによる出荷ミスや回収リスクを減らすのに役立ちます。
クラウド化の3つのポイント
メーカー・倉庫業が在庫管理をクラウド化し、失敗せずに成功へ導くための3つのポイントをお話します。
「現場の業務フロー」を最初に標準化すること
クラウド化の失敗の多くは、「現場のやり方がバラバラのままシステムを入れてしまう」ことが原因です。
成功のための要点としては、
- 拠点・担当ごとに異なる運用(棚入れ手順、ラベル形式など)を整理
- 標準フローを決めてからクラウドへ落とし込む
- 現場リーダーを巻き込んで合意形成をする
最初に標準化することで、現場が「使える仕組み」になり、定着率が大きく上がります。
段階的に機能を導入し、早く小さな成果を出す
いきなりフル機能導入したくなりますが、フル機能をいきなり導入すると、現場負荷が増えます。当然、負荷が増えると反発や混乱が起きます(誰が考えてもわかります)。
こうした社内トラブルを発生させないためにも、クラウド化は 「スモールスタート」の方が成功率が高いです。スモールスタートで素早く小さな成果を出して、次の小さな段階へ進みましょう。
成功のための要点としては、
- まずは在庫リアルタイム化やロット管理など、優先度の高い機能から開始
- スタートしてから1~3ヶ月で「改善が見える」成果を出す(コレ、必須)
- 小さな成功を積み重ねて現場の理解と協力を得る
短期間で投資対効果を示すことで反対意見も減っていきますし、経営判断もしやすくなります。
経営層が「運用継続」をコミットする
30年経っても変わらないのが「システム入れたら勝手に良くなる」という期待を持っている経営層が、令和の時代にも存在すること。これは失敗要因になります。
昔から私も言い続けていますが成功のためには、経営が明確にコミットし、運用の徹底を支援する体制が重要です。
最悪なケースは、システム導入にOKを出しておきながら、いざ導入されると反対派に転じる経営層です。私は全く意味がわかりませんので相手にしません(経験から最初に話をしたときに概ねわかります)。
成功のための要点としては、
- 新ルール運用を「会社の方針」として明確化
- トレーニング・問い合わせの窓口を整える
- ユーザーの利用状況を可視化し、定着をフォロー
組織として「運用する文化」が根付きますので、クラウド化が定着するのも早いです。
導入ツールの選び方
倉庫業やメーカーでの在庫管理をクラウド化する際、「どのようなツールを選ぶか」は非常に重要です。以下に、失敗しないためのツール選定の観点を3つお話しますので覚えておいてください。
自社業務にマッチした「柔軟性とカスタマイズ性」のあるツールを選ぶ
理由1:業界・取扱品目ごとで必要な機能(ロット管理、複数倉庫管理、SKU管理、入出庫/棚卸しの手順など)が違うため、固定機能だけのツールでは現場に合わない可能性が高い。
理由2:カスタムフィールドやワークフロー設定、バーコード/QRコード対応など、自社の棚入れ・出荷・検品フローに合わせられる柔軟性が重要。
理由3:将来的な拡張(倉庫増設、販売チャネル追加、物流業務の複雑化など)にも対応できるような「スケーラビリティ」を持っていること。
※理由3は必須ではありません。ビジネス規模や今後の展望によって変わってきます。
導入・運用コストとROI(費用対効果)を明確に測れるツールを選ぶ
理由1:初期導入費だけでなく、月額費・ライセンス数・サポート費・カスタマイズ費などトータルコストを把握できるもの。
理由2:コストに対して「在庫差異削減」「過剰在庫圧縮」「欠品防止による売上向上」「作業工数削減」による見込効果の試算がしやすいツール。
理由3:定期的にコスト対効果を評価できるダッシュボードや分析機能があると、経営判断もしやすい。
※理由1は必須です。理由2と3は経営層が「何を見たいのか」によってきます。
現場が使いやすく「定着しやすい操作性・サポート体制」のあるツールを選ぶ
理由1:ユーザー(現場スタッフ、出荷担当、倉庫担当、営業など)が直感的に使える画面。複雑すぎず、教育コストが低いものがおすすめ。
理由2:モバイル対応(タブレット/スマホ)で、現場でバーコードスキャンや入力がしやすいこと。
理由3:導入時のトレーニング支援、運用後のサポート体制が充実していること。
※教育コストは想像よりも高いので、出来るだけ低く抑えられそうなツールを選びましょう。
※トレーニング支援や運用後のサポート体制ですが、準備されているクラウドサービスがほとんどです。しかし、実際に「活用できるか」というと、、、現実的には期待し過ぎない方が良いです。
社内だけでは難しいと感じた場合
クラウド化したいけれど、ツール選定や教育、運用後のサポートなどを考えると、社内だけで進めるのは難しそう。そう感じられた方は、社外の専門家に相談されることをおすすめします。
クラウドツールを提供している会社と、あなたの会社との間に入ってクラウド化を進めることができれば、社内の負担をかなり軽減しながら、成功への近道を進むことができます。
さいごに
在庫管理のミスは、じわじわと利益に影響してきます。この問題の困ったところは、利益が下がったのを見つけたときには手遅れになっているケースが多いことです。
もし、在庫管理の問題を感じておられるのなら、ダラダラと先延ばしせずに早めに改善行動を進める必要があります。
悩んでいても解決しません。解決してくれる人が、ある日のお昼休みに、あなたの会社の玄関で「ピンポーン!」とベルを押し、「あなたの会社を無料で助けにきました!」というようなことを想像しても実際には起こりません(起こった場合、多くは詐欺です)。
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