DXという言葉を耳にすることが増えてきていますが、自社では無理だと思っていませんか?中小製造業でも現場をデジタル化することで、生産効率や品質管理の改善が可能です。
今回は、私の経験から見えている「DX導入の基本と具体的な進め方」を解説します。
DXとは何か?中小製造業向けにわかりやすく解説
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、次のように考えていただくと「自分事」としてイメージしやすくなると思います。
「デジタル技術を活用して、会社の仕事のやり方やビジネスの形を変えること」
- ITツールを導入する
- デジタルデータを管理する
こうした「道具」としてのデジタル化だけではなく、デジタル化することで発見できる「自社の強み」を活かした、効率的で新たな価値を生み出す会社へバージョンアップすることが目的です。
現場デジタル化で解決できる課題
次のような課題が解決しやすいです。
- 作業の効率化
- 品質向上
- コスト削減
- 新しい価値の創造
作業の効率化の例
紙ベースの作業日報をタブレットから入力できるようにテジタル化。こうすることで、毎回集計するときに電卓を使わず、入力されたデータを自動集計すればOK。
集計ミスも減りますし、何より「手で集計する」手間と時間が削減できますから、他の仕事に注力する余裕が生まれます。
品質向上の例
センサーで設備状態をモニタリング。モニタリングしたデータを使うことで、ほぼリアルタイムに不具合を早期発見できます。
コスト削減の例
生産データをデジタル化して集め分析することで、段取り時間を短縮することや、ムダな作業を発見できます。
新しい価値の創造の例
顧客との商談や取引情報をデジタル化し活用することで、
- 製品の改良ポイント
- 提供サービスの新たな展開
- 商談の流れを見直す
- 新商品の開発
こうしたことが行えるようになります。
デジタル技術×現場力
DXは「デジタル技術×現場力」です。
生産性をアップし、ミスを減らし、重複作業の手間を減らすことを目標にします。ということは、人手不足でも強い会社に変えるための取り組みなのです。
中小製造業様にとって、「やらない理由はどこにもない」ということです。
中小企業でも始められる簡単DXステップ
ステップ1:現場の課題を見える化
いきなり「デジタル化」ではなく、まずは
- どこにムダがあるのか
- どのような課題があるのか
この2つを洗い出しましょう。
例えば、よくあるのが次のような例です。
- 受注や発注、製造に関する情報が「〇〇さん」の頭の中にしかない
- 設備を停止する場合の理由が曖昧
- 紙を使った記録や転記の作業が多い
リストアップすることで「何をデジタル化するのが理想か」を明確にできます。
ステップ2:小さなデジタル化
会社の流れを急激に全部デジタル化する必要はありません。
ひとつの工程。ひとつの部署。こうした小さな部分から始めることができます。
例えば、
- 紙の作業日報を、Excelなどで入力するように変える
- ホワイトボードの予定表を、全社員共有できるカレンダーに変える
- 検査などの記録を紙ではなく、タブレットから入力するようにする
どれも小さなことですが、現場が使いやすい方法を考えて変化させることで「使えるDX」が進みます。
ステップ3:データを集める
小さなことでもデジタル化すると、データを集められます。すると、集めたデータを使って改善に活かすことができるようになります。
「感覚」から「データという事実」で判断するように、会社の文化を変えていけます。
ステップ4:社内共有・標準化
新しいやり方。デジタル化されたデータ。これらの情報を社内で共有します。するとここから「仕組化」の定着へ進めることができます。
例えば、
- 改善方法をマニュアル化
- 改善事例を社内で共有
- 新人や中途採用の人の教育へデジタルツールの活用を組み込む
本当に少しずつですが、こうした動きを継続することで「〇〇さんがいないとわからない」を減らすことができます。
ステップ5:ビジネス拡大
デジタルデータが増えていくほど、新しい価値を生み出すための「マーケティング」に活用できます。
これまで見えてこなかった「新たな市場」「新たな業種」などによって、ビジネス拡大のチャンスをつかむことが可能になります。
導入事例:小規模工場でも効果が出た実例
製造業様の場合、ほとんどが「BtoB(企業間取引)」です。そのため、新しい取引先の獲得は簡単ではありません。
そこで、新規獲得で最も時間と労力がかかる「見込み客獲得」までを、過去の営業行動や顧客行動を洗い出し、デジタルデータとして集めて活用。無理だと思っていた「ウェブマーケティング」を実践したことで、毎月20~30件の問い合わせが発生するようになりました。
当然、すべての問い合わせ先がお客様になるはずはありませんが、見込み客獲得の手間と労力を「問い合わせがあったところとの商談」へ注力できるようになったことから、良い条件の取引先を選べるようになりました。
さいごに
中小製造業様こそ「DX化」を進めてほしいと思います。というのも大手企業とは違い、常に社内のリソースは不足気味だからです。
「小さく始める」→「データを集める」→「改善につなげる」という流れを取り入れてもらうことが、中小製造業様のDX成功のカギになると思います。
