kintoneは中小建設業でも簡単に使えるクラウド業務改善ツールです。今回は、実際の活用事例を5つ紹介し、どのように業務効率を上げたかをお話します。
kintoneとは?
kintone(キントーン)とは、サイボウズが提供する「ノーコードで業務アプリを作れるクラウド型業務システム」です。
紙やExcelで管理していた情報を、
- 現場
- 事務所
- 経営層
それぞれがリアルタイムで情報を共有できるような「現場の生きている情報」を簡単にまとめられます。
これまでならバラバラだったExcel・紙・LINEの情報が1つにまとまりますので、現場の進捗状況とお金流れが常に可視化できる仕組みを作れるのがkintoneです。
中小建設業でも使える理由
中小建設業こそ、kintoneとの相性が抜群です。その理由は以下の通りです。
ノーコードなので自社で作れる!改善し続けられる!
建設業は現場や取引先(請負先など)によってルールが違います。そのため大掛かりなERPやパッケージソフトでは必ず「合わない部分」が出ます。
しかしkintoneなら、
- 現場管理アプリ
- 見積→契約→発注の流れ
- 安全書類
- 日報管理
こうした変化の多い業務も自社仕様に合わせて作り替えられるため、業務にフィットしやすくなります。大手ITベンダーに頼らず、社内でも改善できるのがメリットとして大きいです。
現場でのスマホ入力に強いので運用が定着しやすい
現場で情報を入力するのがPCしかできないと、、、面倒がられて使われません。しかしkintoneですとスマホアプリが標準装備されています。
- 日報
- 現場写真
- 進捗報告
- チャット連携
現場から素早く簡単に入力できます。建設業の場合、現場から情報が発生しますので、「現場で使える」ことが必須です。
初期費用が安く導入ハードルが低い
ITベンダーから建設業向けシステムを導入すると
- 初期費用が100万円~300万円
- 月々のサポート費用が10万円~30万円
これくらいは最低限必要です。これよりも安い場合は、サポートとか期待できませんし、使えないシステムだったりすることが多いものです。
kintoneですが、1ユーザーあたり月額1,500円くらいからです(詳しい費用はkintoneの料金ページをご覧ください)。
「とりあえず試験的に10名からスタートしてみる」こんなことができます。スタートしてみて、効果が期待できない(自社にはフィットしない)場合はサブスクなので契約を止めれば終わりです。
Excelや紙を使っている文化と相性がよい
kintoneの強みの一つとして「Excelからデータを取込やすい」という特長があります。kintoneの操作方法や画面の作りもExcelに近いです。
そのため、
- 紙からの入力も置き換えやすい
- Excelからの入力も簡単
教育コストが低いのでスムーズに導入できます。
建設業に多い「外部連携」もできる
よくある「やりたいこと」の例としては、
- 会計ソフトとの連携
- Google Driveなどとの連携
- LINEとの連携
こういうのです。kintoneを中心に置くことで連携できる部分が増えます。すると二重入力が減りますし、入力ミスも防げます。
箇条書きにしてまとめると
- 現場と事務所と社長で情報がバラバラ → 1つのデータベースに集約できる
- Excelや紙の情報が乱立 → ノーコードで現場向けのアプリを構築できる
- 工程や原価や写真が共有されない(遅い) → スマホからリアルタイムに報告
- 高価なのに建設専用ソフトが自社にフィットしない → 低コストで自社仕様に完全フィット可能
- IT担当者がいないので使えない → 内製が可能ですし外注も最小限でできる
業務改善事例5選
事例1:工事台帳(案件管理)の一元化
現場・見積・発注・原価・請求を1つの台帳に紐づけて管理する仕組みを構築。
改善内容
- Excelで案件ごとにバラバラだった工事情報をkintoneに集約
- 見積金額、実行予算、発注金額、原価、粗利がリアルタイムで見える
- 写真・図面・契約書も工事に紐づけて管理
効果
- 現場と事務所が同じ情報を共有できる
- 粗利のブレが発生した瞬間に分かる
- 過去案件を検索しやすくなるので積算の精度が上がる
事例2:現場日報のスマホ入力
職人や現場管理者がスマホで日報を入力することで、稼働時間を自動で工事台帳に反映。
改善内容
- スマホから作業内容・人数・時間を入力
- 写真もその場でアップロード
- 人件費原価を自動計算して工事台帳に反映
効果
- 日報の未提出と遅延が激減
- 「人件費がどの工事に何時間かかったか」をすぐに把握
- 原価管理の精度がアップ
事例3:資材・外注の発注ワークフロー化
発注書・見積依頼・注文書が自動生成され、承認フローも一目で管理。
改善内容
- kintoneで発注データを入力しPDF発注書を自動出力
- 社長や技術部長の承認フローをkintone上で完結
- 協力会社ごとに支払管理が可能
効果
- 発注漏れ・二重発注がゼロに近づく
- 原価管理の数字と発注金額が一致する
- 社長が「承認待ちの件数」を一覧で把握できる
事例4:安全書類(労務安全書類)のクラウド化
協力会社からの安全書類をkintoneで提出・管理し、現場ごとに自動整理。
改善内容
- 施工体系図、作業員名簿、資格証、保険証などをkintoneで提出
- 有効期限を自動通知
- 現場ごとに必要書類を自動で紐づけ
効果
- 書類忘れ・期限切れのチェック工数が大幅削減
- 現場監督の手間が数時間/週単位で減る
- 協力会社とのやり取りがスマートになる
事例5:工程表×現場報告の連動
工程表と現場進捗を連携させることで、遅延を早期に察知。
改善内容
- 工程表をkintone内で作成し、毎日の現場の進捗と連動
- 各工程の開始完了報告はスマホから
- 遅延が出るとアラート通知
効果
- 工事全体の遅延が早期に分かる
- 協力会社への連絡がスムーズにできる
- 工程管理の「属人化」が解消される
導入のポイント
kintoneの導入では、現場と経営のどちらも成功するための視点が必要になってきます。そこで私の経験から実際の導入支援で「ここを外すと失敗する」という要点だけを抽出してお話します。
「解決したい業務」を1つに絞る
kintoneは自分達で作っていけるクラウド型ソフトウェアです。そのため、kintoneは「何でもできる」のです。
ただし、この「何でもできる」というのが、実は問題になってきます。というのも、あれもこれもできるなら「最初から全部やろう」という流れになってしまうからです。
経験から申し上げますと、最初から全部やろうとすると「ほぼ100%失敗」します。
ですので、あえて断言しますが、「1テーマ」に絞ってもらいたいです。その方が社内で定着しますと、長続きします。
現場で使える画面にする
kintoneを導入しても定着しない理由。それは、現場で使いづらい画面になっているから。
現場で使いやすい画面とは、
- 入力項目は最小限にする
- スマホで入力できる
- スマホで3ステップで入力完了できる
- 入力する人の名前、現場名、工程名、写真が簡単に出せる工夫をする
現場で使える画面にすれば、成功しやすくなります。
業務の流れを再設計する
紙やExcelからkintoneへ置き換えるとき、単に「代替え」にするのでは失敗します。こうした機会だからこそ、業務の流れを再設計しシンプルな流れにできないのか検討してください。
例えば、
- 誰が
- いつ
- どのタイミング(またはきっかけ)で入力するのか
もう一歩進めると、
- 入力した情報は
- どの情報とつながり
- 誰が承認するのか
さらに進めて考えると、
- 承認された情報は
- どの情報が工事台帳につながり
- その後の原価へは、どの情報を流すのか
他にもありますが、業務の流れを小分けにして見直すことで、kintoneで作りやすくなりますし、業務効率化も進みます。
工事台帳を中心に情報を設計する
建設業では現場目線で物事を考えると「工事台帳」を中心にするのが適切だとわかってきます。なぜなら、
- 日報→工事台帳へ書く
- 発注→工事台帳へ書く
- 見積→工事台帳へ書く
- 写真→工事台帳と紐づける
- 安全書類→工事台帳と紐づける
というように、すべての情報(データ)が工事と関係するように考えるのが成功の黄金ルールだからです。
これができると、
- 原価と粗利が自動で見える(会社全体でも工事単位でもわかる)
- 過去工事の再利用が簡単(見積り速度と精度がアップ)
- 社長の意思決定が高速(いつでも最新の情報が見られる)
という状態になります。
小さく繰り返して社内運用ルールを改善し明文化
社内の運用ルールを明文化し、小さく改善を繰り返すことで、どんどんと使える自社向けツールへと育っていきます。
kintone導入は一般的な「ITシステム導入」ではなく、運用改善プロジェクトと考えるのがおすすめです。
重要なのは、次の3点を明文化することです。
- 誰が、いつ、何を入力するか(何度も言いますがホントに大事)
- 入力漏れがあった時のルールを明文化する
- 毎月どこを改善するか検討してみる
月1回の小さな改善(画面項目を1つ減らすとか、通知方法を調整するとか)を続けることが成功しながら成長する鍵になります。
さいごに
kintoneは便利なツールです。紙やExcelでの運用に困っておられるのなら、一度検討してみても良いツールだと思います。
もし自社だけでは、
- kintoneの導入は難しそう
- どこから手をつけていいのかわからない
- 改善点の見つけ方や改善作業が難しそう
こういう不安がある場合は、ヒビノシステムのような経験をもったエンジニアへ相談してみてください。これまでの経験から、小さくスタートして成長させるスケジュールや、最初に始めるポイントなどが明らかになっていくと思います。
