非IT企業様のなかには、社内人材を活用して「社内専用アプリ開発」を進めよう(進めている)というところが少しずつですが増えてきています。

これは昨今、ローコードやノーコードでアプリケーション開発を進めることができる環境が整っているため、自社で開発して小回りを利かせたほうが便利なので良いという理由もあると思います。

今回は非IT企業様が社内専用アプリ開発の成功と失敗を決める原因になると申し上げても過言ではない「業務フローの見える化」のポイントと注意点を、これまでの経験からお話します。

「見える化」を行うときの最重要ポイント5つ

  1. 目的の明確化
  2. 関係者の巻き込み
  3. 現状と理想の整理
  4. 業務単位の粒度
  5. 改善やシステム化に向けた課題の明確化

それでは詳しく見ていきます。

目的の明確化

ポイント

業務フローを見える化する目的を明確にしましょう。例えば、

  • 業務改善
  • システム化したい箇所
  • 無駄と思われる作業の削減
  • 属人化の回避

注意点

  • 目的が曖昧なままだと形だけの「図」になってしまう
  • 関係者が納得しない
  • 現状を「図」にすることが目的になり、当初の目的が達成されない

関係者の巻き込み

ポイント

  • 実際に業務を行っている関係者や現場担当者の声を反映
  • 形式的な「上流部門」の話ではなく、現場の実績や例外業務も拾いあげる

注意点

  • 現場不在は実態との乖離を生む「机上の空論フロー」になる
  • 担当者によって認識が違っていることが多いため、多面的なヒアリングが必要
  • 現場で「なぜそうしているのか」をしっかりと知る

現状と理想の整理

ポイント

  • 現状の業務フローと理想の業務フローを明確にする
  • 現状と理想を分けて考えることで、問題のあるところや変えたいところがわかりやすくなる

注意点

  • 理想だけでは現場が使えないものが出来上がる
  • 理想だけでは非現実的な提案になりがち
  • 現状の把握がなければ、効果的な改善やシステム化は不可能になる

業務単位の粒度

ポイント

  • 粒度を揃えて業務単位を見ないと、比較が難しくなる
  • 粒度は「細かく分けすぎず」「大まかすぎない」ことが大切

注意点

  • 担当者ごとに認識の粒度が違うため、揃えないと全体を俯瞰できずに混乱を生む
  • 大まかすぎると、抜けや漏れ、重複に気づかないまま進んでしまう

改善やシステム化に向けた課題の明確化

ポイント

  • 「見える化」は目的ではなく手段である
  • 「見える化」は改善に活かせることで意味が生まれる
  • 業務プロセスごとに問題点を整理しやすい(時間がかかっている、属人化している、エラーが多いなど)

注意点

  • 「見える化」でフローを作って満足してはいけない
  • フローを見ることで「何が問題なのか」を見つけることが大切
  • フローを見ることで「本当に必要な業務なのか」という疑問を投げかける

非IT企業様ならではの注意点

  • IT関連の専門用語の多用は避けましょう(※1)
  • 社内の専門用語の認識を一致させましょう(※1)
  • 業務フローの「見える化」で満足せずに、その先に進めましょう
  • 属人化している部分は、標準化や仕組み化できないか検討するポイントです

※1:専門用語は認識が違うと、いくら会話を続けてもズレが生じたままになりやすいです。

業務フローの「見える化」で使えるヒアリング項目

業務フローの「見える化」を行うときに活用いただけるヒアリング項目をご紹介します。

【業務概要】

  • 業務の名称は何ですか?
  • この業務の目的は何ですか?
  • 業務の成果物(アウトプット)は何ですか?
  • 担当部署・担当者は誰ですか?
  • 業務の実施頻度は?(例:毎日、週次、月次、不定期)

【業務の開始条件と終了条件】

  • 業務はどのようなきっかけで始まりますか?(トリガー)
  • 業務はどの時点で終了したと判断しますか?
  • 業務の入力情報(インプット)は何ですか?
  • 業務の出力情報(アウトプット)は何ですか?

【業務フローの詳細】

  • 業務はどのようなステップで進みますか?(時系列で)
  • 各ステップの作業内容を具体的に教えてください。
  • ステップごとに必要な入力情報は何ですか?
  • 使用している帳票、エクセル、システム、ツールは何ですか?
  • 誰がその作業を行っていますか?(担当者・役割)

【例外処理・判断基準】

  • 業務中に例外ケース(イレギュラー対応)はありますか?
  • 作業中に判断が必要な場面がありますか?どのような基準で判断しますか?
  • 特定の人にしかできない処理(属人化)はありますか?

【情報の流れ・連携】

  • 他の部署や業務とどのような情報連携がありますか?
  • 二重入力や転記作業など、無駄な処理はありませんか?
  • 外部からデータを受け取る、あるいは外部に渡す処理はありますか?

【時間とボトルネック】

  • どのステップに時間がかかっていますか?(主観でOK)
  • 作業が滞る、またはミスが多い部分はどこですか?
  • 納期や期日など、業務に期限はありますか?

【ツール・システム利用状況】

  • 使用しているシステム名/ツール名は何ですか?
  • 操作に慣れていない人が困っている場面はありますか?
  • 紙・手作業が多い工程はありますか?

【改善に関する認識】

  • 現在の業務フローに課題を感じていますか?
  • どの部分が改善できると感じていますか?
  • 自動化・効率化できそうなステップはありますか?
  • 必要がない、または削減できる業務はありますか?

【備考・その他】

  • この業務に関して、特に伝えておきたいことや周知しておきたいことはありますか?
  • 業務内容は今後変更される予定がありますか?
  • 法令、業界ルール、社内ルール等による制約事項はありますか?

さいごに

非IT企業様が自社でアプリケーション開発を進める場合、

  • どんなプログラミング言語で作るのか
  • どんなツールを選ぶのか
  • 誰がリーダーとなるのか

こうした開発に関することを優先してしまうことが多いのですが、どんなところでも業務向けのアプリケーション開発を進める場合には「業務フローの見える化」なくして進めることはできません。

アプリケーション開発において「業務フローの見える化」は、目的地へ向かうための地図です。地図を持っていないまま動いたとしても、すぐに迷ってしまうことになります。

今回の内容は普遍的な内容です。そして何度でも読み返してもらいたい内容です。是非、ご活用ください。